匿名希望のおでんFortranツヴァイさん太郎

生き物、Fortran、川について書く

河川における湧水環境

一般に河川環境は同一河川内でも場所によって異なっています.例えば,ワンドのような淀んだ場所は水の入れ替えが少ないため,夏場は水温が高くなりがちです.一方で,湧水は夏場でも水温が低いのが特徴です.ワンドであっても湧水が豊富に供給されれば水温が低く保たれます.河川の水温が極めて高い場合は湧水の湧出する場が避暑地として機能します.アユは水温が高いときに深みや湧水のある場所に避難します(土用隠れ)*1


こうした低水温環境が形成されるおかげで,タカハヤなどの上流域の魚が中流部で生存していいることもあります.
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湧水は砂州尻ワンドや中州脇のほか,地下水の豊富な場所では河岸からも湧出します.地中を通る間に懸濁物が除去され,以下の写真のように透明度が高くなるのも特徴です.
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目当ての生き物が湧水内にいると懸濁物に邪魔されずにきれいに撮ることができます.
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夏場であれば川に入れば水温の違いでどこに湧水があるのかが分かります.冬の場合は湧水の方が温かいので湧水が上層に上がり,熱赤外カメラで探すことができるようです*2.興味のある方は自分の身近な河川で探してみてはいかがでしょうか.

*1:中川光,三品達平,竹門康弘(2015) 京都府鴨川下流域におけるアユ (Plecoglossus altivelis altivelis) の生息場所利用と成育状況.応用生態工学,18(1),53--63.

*2:萩原良巳,萩原清子,小尻利治,鈴木淳史,河野真典(2009)底生動物群集と印象による水辺環境評価.京都大学防災研究所年報,52(B),851--865.