匿名希望のおでんFortranツヴァイさん太郎

生き物、Fortran、川について書く

読書感想文 : A geometric approach to differential forms. Second Edition.

本稿は以下の書籍の感想文です。

  • Bachman, David (2011) A geometric approach to differential forms. Second Edition. Springer. pp.156. *1

本書の特色は表題の通り、微分形式をできる限り幾何学的直観に基づいて説明することです。 微分形式はしばしば外積代数から導入されたり、テンソル積から構成されたりなど 代数的に導入されることが多く、一体何をしているのかが分りにくいです。 外微分についても形式的な定義にとどまることが多々あります。 結果的に、計算はできるし定理の証明も追えるが、微分形式自体が何を表しているのか さっぱりわからないという事態に陥ります。

それに対して、本書はできる限り微分形式を直観的に理解させようと試みます。 図も豊富に用いられます。 このような方針で微分形式を解説する本はあまり多くないのではないでしょうか。 外微分については何を微分しているのか、なぜ k-形式を外微分すると (k+1)-形式になるのかを説明しています。 微分形式の積分は 2-形式の積分から導入することで、定義の妥当性を直観的に理解させてくれます。 積分の手順はこれでもかというくらい丁寧に繰り返し解説されます。

本書のもう一つの特色は、きわめて簡単な練習問題が数多く設けられていることです。 難度としては、定義が分かれば解ける、あるいは例を見れば同じように解けるくらいのものが多いです。 曲面を描画させる問題もあります。 このおかげで計算の感覚や幾何学的感覚を磨くことができます。 曲線あるいは曲面のパラメータ付けの問題もたくさんあり、 これらを解くことで後半の多様体の話もすんなり頭に入ってくる仕組みになっています。

私は本書を読んだ後もまだ微分形式についてわからない点がありますが、 理解のきっかけを多く得ることができました。 ホッジの星印作用素の直観的説明がないのは物足りないですが、 書物全体の流れを考慮すると欠点とは言えません。 注意点としては、代数的説明から入った場合よりも計算規則の説明が煩雑に感じる可能性があることです。 そのため、微分形式入門の最初の一冊として読むよりも、微分形式の計算や代数的構成を経験した後に、 個々の概念の繋がりを理解するために読む方が得るものが多いと思います。 微分形式で何をやっているかわからず困っている方は是非読んでみてください。